日大工 総合教育 樋口幸治郎
ホーム | 教室 | 研究室 |
---|---|---|
工科系数学I及び演習 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Lorsque ces deux sciences se sont réunies,
elles se sont prêté des forces mutuelles,
et ont marché ensemble d'un pas rapide vers la perfection.
この二つの理論(代数と幾何)が手を取り合えば, 相補して完璧へと足を早めていく.
--- Leçons élémentaires sur les Mathématiques Joseph-Louis Lagrange
「数学初等講座」ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ
単調性と逆関数を学ぶ. (教科書p53-55)
定義 関数$f(x)$について, $$x_1< x_2\quad\Longrightarrow\quad f(x_1)< f(x_2)$$ であるとき, 関数$f(x)$は単調増加であるという. また, $$x_1< x_2\quad\Longrightarrow\quad f(x_1)> f(x_2)$$ であれば, 単調減少という. 単調増加, 又は, 単調減少である関数を単調関数と言う. グラフについては, 単調増加関数は右上り, 単調減少関数は右下がりとなる.
例
1. 関数$x, 3x, x^3, 2^x, \log_3 x$は全て単調増加関数
2. 関数$-x, -2x, -x^3, \left(\dfrac{1}{2}\right)^x, \log_{\dfrac{1}{3}} x$は全て単調減少関数
3. 関数$x^2$は区間$(-\infty,0]$で単調減少であり, 区間$[0,\infty)$で単調増加,
4. 関数$\sin x$は区間$\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]$で単調増加.
関数$\cos x$は区間$\left[0,\pi\right]$で単調減少.
単調関数$y=f(x)$について, 値yに対してy=f(x)となるような実数xは(あれば)唯一つである. そこで以下のように関数$f(x)$の逆の対応(=逆関数)を考えることができる.
定義 関数$y=f(x)$は, $$ 値yに対してy=f(x)となるような実数xは(あれば)唯一つ\tag{1} $$ であるとき, 関数$y=f(x)$での独立変数xと従属変数yの役割を入れ替えて, 独立変数$y$に対して$y=f(x)$を満たす従属変数$x$を対応させるような関数を考えることができる. これを関数$f(x)$の逆関数といい, $$x=f^{-1}(y)\quad または\quad f^{-1}(y)$$ で表す. 或いは, $x,y$を入れ替えて $$y=f^{-1}(x)\quad または\quad f^{-1}(x)$$ とも表す. またこのとき, $f(x)$は逆関数を持つという. 区間$I$上で(1)の条件が成り立つときには, $f(x)$は区間I上で逆関数を持つといい, その逆関数$f^{-1}(x)$を$f(x)$の区間I上の逆関数という.
逆関数の定義から逆関数の値$f^{-1}(y)$は $$f^{-1}(y)=``f(x)=yとなるx"$$ という意味であり, 故に, $$y=f(x)\quad\iff\quad f^{-1}(y)=x\tag{2}$$ が成り立つ.
逆関数では$x$と$y$の役割が入れ替わるのだから, グラフにおいては$x$軸と$y$軸を入れ替えることに相当する. 従って, $y=f(x)$のグラフを直線$y=x$を軸に半回転させると$y=f^{-1}(x)$のグラフが得られる.
逆関数の逆はもとに戻る. つまり, $$(f^{-1})^{-1}(x)=f(x)$$ である. これはグラフでいうと, 直線$y=x$を軸に半回転を二回, つまり, 一回転することに相当するからである. 逆の逆が元通りなので, $$f(x)\quad \overset{逆}{\iff}\quad f^{-1}(x)$$ のようにある関数と逆関数の関係を書き表すこともある.
定理 逆関数を持つ関数$f(x)$について, $$f^{-1}(f(x))=x,\qquad f(f^{-1}(x))=x$$ が成り立つ.
証明 (2)より $$f^{-1}(f(x))=x\quad\iff\quad f(x)=f(x)$$ $$f(f^{-1}(x))=x\quad\iff\quad f^{-1}(x)=f^{-1}(x)$$ であるが, どちらも右辺は明らかに成り立つから, 左辺の等式も成り立つ.
例 $$足し算x+r\overset{逆}{\iff}引き算x-r\qquad 掛け算rx\overset{逆}{\iff}割り算\dfrac{x}{r}\qquad 自乗x^2\overset{逆}{\iff}平方根\pm\sqrt{x}$$ $$冪乗x^r\overset{逆}{\iff}冪乗根x^{\dfrac{1}{r}}\qquad 指数関数r^x\overset{逆}{\iff}対数関数\log_rx$$ $$三角関数\sin x,\cos x,\tan x\overset{逆}{\iff}逆三角関数\arcsin x,\arccos x,\arctan x$$ 因みに, より一般の関数(実数上の関数とは限らない対応関係)についても「逆」を考えることができ, 例えば, $$式の展開\overset{逆}{\iff}因数分解\qquad微分\overset{逆}{\iff}積分$$ である. 興味がある人は集合論や圏論を学ぶと良いだろう.
定理 区間$I$上で定義された関数$f(x)$とその逆関数$f^{-1}(x)$について, $$f(x)は単調増加/単調減少\iff f^{-1}(x)は単調増加/単調減少$$ であり, また, $$f(x)は連続\iff f^{-1}(x)は連続$$ である.
証明 $f(x)$と$f^{-1}(x)$のグラフは直線$y=x$について対称であるから, $$グラフf(x)が右上がり/右下がり\iff グラフf^{-1}(x)が右上がり/右下がり$$ であり, $$グラフf(x)に飛びがない\iff グラフf^{-1}(x)に飛びがない$$ であるから, 定理が成り立つ.
定理 区間$I$上で微分可能な単調関数$f(x)$について, $f^\prime(f^{-1}(x))\ne 0$ならば, $f^{-1}(x)$も微分可能で, $$\Big(f^{-1}(x)\Big)^\prime =\left.\dfrac{1}{f^\prime(t)}\right|_{t=f^{-1}(x)} =\dfrac{1}{f^\prime(f^{-1}(x))}$$ が成り立つ.
証明 条件から$f^{-1}(x)$は連続であり, 関数$f(x)$と合成関数$f(f^{-1}(x))=x$は微分可能なので, 合成関数の微分定理から $$1=(x)^\prime=\Big(f(f^{-1}(x))\Big)^\prime=f^\prime(f^{-1}(x))(f^{-1}(x))^\prime$$ が成り立つ. 両辺を$f^\prime(f^{-1}(x))\ne 0$で割って, $$\Big(f^{-1}(x)\Big)^\prime=\dfrac{1}{f^\prime(f^{-1}(x))}$$ が得られる.
例 $(x^2)^\prime=2x$より$(\sqrt{x})^\prime=\left.\dfrac{1}{2t}\right|_{t=\sqrt{x}}=\dfrac{1}{2\sqrt{x}}$
冪関数$x^q$についての微分公式と(教科書p7,p38,p41), 凸関数の微分可能性について学ぶ(教科書範囲外).
冪関数の微分公式$$(x^r)^\prime=rx^{r-1}\quad(rは有理数)\tag{1}$$ を段階的に証明する.
まず, $r$が自然数のとき等式(1)が成立する.
証明 等式$(x^n)^\prime=nx^{n-1}$を数学的帰納法で証明する. $(x^1)^\prime=(x)^\prime=1=1\cdot x^{1-1}$なので$n=1$のときは良い. $n=k$のときに等式の成立を仮定する(これを帰納法の仮定という)と $$(x^{k+1})^\prime=(x^kx)^\prime\underset{積の微分}{=}(x^k)^\prime x+x^k(x)^\prime \underset{帰納法の仮定}{=}kx^{k-1}x+x^k=kx^k+x^k=(k+1)x^k$$ となり, $n=k+1$のときも等式が成立する.
次に, $r$が整数のとき等式(1)が成立する.
証明 自然数のときは既に証明した. $r=0$のときは$$(x^0)^\prime=(1)^\prime=0=0x^{0-1}$$なので良い. $r$が負の整数$-n$のときは $$(x^r)^\prime=(x^{-n})^\prime =\left(\dfrac{1}{x^n}\right)^\prime \underset{逆数の微分}{=}-\dfrac{(x^n)^\prime}{(x^n)^2} =-\dfrac{nx^{n-1}}{x^{2n}} =-nx^{(n-1)-2n} =-nx^{-n-1} =rx^{r-1}$$ となるから, やはり等式(1)が成立する.
さらに, $r$が有理数のとき等式(1)が成立する.
証明 まず, $r=\dfrac{1}{n}$ ($n$は自然数)のときには, $$(x^r)^\prime =\left(x^{\dfrac{1}{n}}\right)^\prime =\left(\sqrt[n]{x}\right)^\prime \underset{逆関数の微分}{=}\left.\dfrac{1}{(t^n)^\prime}\right|_{t=\sqrt[n]{x}} =\left.\dfrac{1}{nt^{n-1}}\right|_{t=\sqrt[n]{x}} =\dfrac{1}{n(\sqrt[n]{x})^{n-1}} =\dfrac{1}{n}x^{\dfrac{1}{n}-1} =rx^{r-1} $$ となり等式(1)が成立する. この結果を使って, $r=\dfrac{k}{n}$ ($n$は自然数,$k$は整数)のときには, $$(x^r)^\prime =\left(x^{\dfrac{k}{n}}\right)^\prime =\left(\left(x^{k}\right)^{\dfrac{1}{n}}\right)^\prime \underset{合成関数の微分}{=}\left.(t^{\dfrac{1}{n}})^\prime\right|_{t=x^k}\cdot\left(x^k\right)^\prime =\dfrac{1}{n}(x^k)^{\dfrac{1}{n}-1}\cdot kx^{k-1} =\dfrac{k}{n}x^{\dfrac{k}{n}-1} =rx^{r-1} $$ となるから, やはり等式(1)が成立する.
定義 関数$y=f(x)$について, 任意の$a$について平均変化率 $$\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$$ が$h$の関数として単調増加/単調減少であるとき, 関数$y=f(x)$は下に凸/上に凸であるという.
下に凸であることをグラフでいうと, 関数$y=f(x)$のグラフ上の任意の2点を結ぶ線分はグラフより上側にあることを意味する.
同様に, 上に凸であることをグラフでいうと, 関数$y=f(x)$のグラフ上の任意の2点を結ぶ線分はグラフより下側にあることを意味する.
下に凸な関数$f(x)$の$x=a$での平均変化率$\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$は$h$の関数として単調増加であるから, $h>0$のとき, $$\dfrac{f(a+(-h))-f(a)}{(-h)}<\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$$ であり, $h\searrow 0$のとき, 左辺は単調に増加し, 右辺は単調に減少する. 従って, この両者の値が同じになっていくとき, つまり, $$\lim_{h\searrow 0}\dfrac{\left(\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}\right)}{\left(\dfrac{f(a+(-h))-f(a)}{(-h)}\right)}=1$$ のとき, 平均変化率は一定の値の収束する. つまり, $f(a)$は微分可能となる.
上記の議論は上に凸な関数についても同様である. 従って, 次が成り立つ.
定理 凸関数$y=f(x)$について, $x=a$について, $$\lim_{h\searrow 0}-\dfrac{f(a+h)-f(a)}{f(a-h)-f(a)}=1$$ が成り立てば, $f(x)$は$x=a$で微分可能である.
応用例 後に示すが, 指数関数$f(x)=2^x$は下に凸である. このことを仮定すると, 指数関数が微分可能であることが定理から示される. というのも $$\lim_{h\searrow 0}-\dfrac{f(x+h)-f(x)}{f(x-h)-f(x)} =\lim_{h\searrow 0}-\dfrac{2^{x+h}-2^x}{2^{x-h}-2^x} =\lim_{h\searrow 0}-\dfrac{2^{x+h}-2^x}{2^{x-h}-2^x}\cdot\dfrac{2^h}{2^h} =\lim_{h\searrow 0}-\dfrac{2^h(2^{x+h}-2^x)}{2^{x}-2^{x+h}} =\lim_{h\searrow 0}2^h =1$$ であるからである.
関数が凸であることを示すには, 次の定理が有用である.
定理 区間上で定義された連続関数$y=f(x)$について, 任意の$a,b$ ($a<b$)について $$f\left(\dfrac{a+b}{2}\right)<\dfrac{f(a)+f(b)}{2}$$ が成り立てば, 関数$y=f(x)$は下に凸である.
上記の不等式において「<」を「>」に置き換えた場合, 結論の「下に凸」は「上に凸」となる.
証明
下に凸であることはグラフ上の2点を結ぶどんな線分も必ずグラフより上側にあることを意味する.
従って, 任意の$u<w$について, 点$(u,f(u))$と点$(w,f(w))$を結ぶ線分を考えると,
$u,w$の間の任意の数$v$について点$(v,f(v))$がその線分より下側にあることを示せば良い.
さて, 任意の$u<v<w$について,
次のように, 列$\{u_n\},\{w_n\}$を定義する:
$$u_1=u,\qquad w_1=w,$$
$$u_2=
\begin{cases}
\dfrac{u_1+w_1}{2} & \dfrac{u_1+w_1}{2}\le vのとき\\
u_1 & \dfrac{u_1+w_1}{2}> vのとき
\end{cases}
\qquad
w_2=
\begin{cases}
w_1 & \dfrac{u_1+w_1}{2}\le vのとき\\
\dfrac{u_1+w_1}{2} & \dfrac{u_1+w_1}{2}> vのとき
\end{cases}
$$
$$u_3=
\begin{cases}
\dfrac{u_2+w_2}{2} & \dfrac{u_2+w_2}{2}\le vのとき\\
u_2 & \dfrac{u_2+w_2}{2}> vのとき
\end{cases}
\qquad
w_3=
\begin{cases}
w_2 & \dfrac{u_2+w_2}{2}\le vのとき\\
\dfrac{u_2+w_2}{2} & \dfrac{u_2+w_2}{2}> vのとき
\end{cases}
$$
以下同様に$u_4,w_4,u_5,w_5,\cdots$を定義していく.
明らかに$u_n,w_n\to v$ ($n\to\infty$)である.
従って, 関数$y=f(x)$は連続だから,
$$f(u_n),f(w_n)\to f(v) (n\to\infty)$$である.
さて, 定理の仮定
$$f\left(\dfrac{a+b}{2}\right)<\dfrac{f(a)+f(b)}{2}$$
から,
グラフ上の点$\left(\dfrac{a+b}{2},f\left(\dfrac{a+b}{2}\right)\right)$は,
点$(a,f(a))$と点$(b,f(b))$を結ぶ線分の
中点$\left(\dfrac{a+b}{2},\dfrac{f(a)+f(b)}{2}\right)$より下側にあることがわかる.
よって,
二点$(u_1,f(u_1)),(w_1,f(w_1))$を結ぶ線分より,
二点$(u_2,f(u_2)),(w_2,f(w_2))$を結ぶ線分は下側にあり,
これよりも二点$(u_3,f(u_3)),(w_3,f(w_3))$を結ぶ線分は下側にあり,
以下同様, となる.
したがって, その極限である点$(v,f(v))$は二点$(u,f(u)),(w,f(w))$より下側にある.
応用例 指数関数$f(x)=2^x$は下に凸であることを示そう. この関数は実数全体で定義されている連続な単調増加関数である. 定理から$a<b$について $$f\left(\dfrac{a+b}{2}\right)<\dfrac{f(a)+f(b)}{2}$$ を示せばよい. これは $$\dfrac{f(a)+f(b)}{2}-f\left(\dfrac{a+b}{2}\right)>0$$ と言い換えることができる. $$f(a)+f(b)-2f\left(\dfrac{a+b}{2}\right) =2^a+2^b-2\cdot 2^{\dfrac{a+b}{2}} =\left(2^{\dfrac{b}{2}}-2^{\dfrac{a}{2}}\right)^2 \underset{単調増加性}{>}0$$