日大工 総合教育 樋口幸治郎
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微分方程式 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
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今回の主な内容は, 微分方程式の解の検算, 特殊解と一般解の説明, 単純な微分方程式の解法を学びつつ, 微積分を復習することである(教科書p5-20の範囲).
方程式 $$y^{\prime\prime}-2y^\prime+2y=0$$ のように, 微分を含む方程式を微分方程式という.
自然界の色々な状況を. 微分方程式で記述できる. それを満たす関数(=微分方程式の解)を計算することで, 自然界の現象を説明が可能となったり, また, 未経験の現象を予測できるようになる.
講義では,
2次方程式 $$ax^2+bx+c=0$$ を解くには, $$x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$ のように, 2乗$(\cdot)^2$の逆である平方根$\sqrt{(\cdot)}$を使って計算するように, $$ay^{\prime\prime}+by^\prime+cy=0$$ のような微分方程式を解くには, $$微分の逆である積分を使って計算する.$$ 従って, 微分方程式を学んでいくにあたり, 微分だけでなく, 積分も復習しておく必要がある.
言うまでもなく, 検算とは $$問題の答えが正しいことを確かめる計算$$ である.
小さな計算ミスも大きな人災につながり得るような工学において, 答えの正しさの確認は重要であろう. 幸い, 一般的な傾向と同様, $$微分方程式を解くことに比べ, その検算は易しい.$$ その検算方法は $$解を微分方程式に代入し, 等式が成り立つことを確かめる$$ とすれば良い.
関数$y=x^4-x^2+1$は 微分方程式 $$y^{\prime\prime}-\dfrac{3}{x}y^\prime=4$$ の解であることを確かめよう.
検算. 関数$y=x^4-x^2+1$の1階微分$y^\prime$, 2階微分$y^{\prime\prime}$は, それぞれ $$y^\prime=4x^3-2x\qquad y^{\prime\prime}=12x^2-2$$ である. 従って, $$\begin{align} &(微分方程式の左辺)\\ =&y^{\prime\prime}-\dfrac{3}{x}y^\prime\\ \underset{代入}{=}&(12x^2-2)-\dfrac{3}{x}(4x^3-2x)\\ =&12x^2-2-12x^2+6\\ =&4=(微分方程式の右辺) \end{align}$$ となり, 関数$y=x^4-x^2+1$が微分方程式の解であることが確かめられた.
実は, 関数$y=-x^2$もまた, 微分方程式 $$y^{\prime\prime}-\dfrac{3}{x}y^\prime=4$$ の解となる. このように, $$微分方程式の解は複数有り得る. $$
微分の記号は$y^\prime,y^{\prime\prime}$の他にも $$\dfrac{dy}{dx}\qquad \dfrac{d^2y}{dx^2}$$ と表せた. この記法の方が, 後々, 微分方程式の解法の説明で見やすくなる. 慣れておこう.
関数$y=3e^x-e^{2x}$が 微分方程式 $$\dfrac{d^2y}{dx^2}-3\dfrac{dy}{dx}+2y=0$$ の解であることを確かめる.
検算. 関数$y=3e^x-e^{2x}$の1階微分, 2階微分はそれぞれ $$\dfrac{dy}{dx}=3e^x-2e^{2x}\qquad \dfrac{d^2y}{dx^2}=3e^x-4e^{2x}$$ である. 従って, $$\begin{align} &(微分方程式の左辺)\\ =&\dfrac{d^2y}{dx^2}-3\dfrac{dy}{dx}+2y\\ \underset{代入}{=}&(3e^x-4e^{2x})-3(3e^x-2e^{2x})+2(3e^x-e^{2x})\\ =&3e^x-4e^{2x}-9e^x+6e^{2x}+6e^x-2e^{2x}\\ =&0=(微分方程式の右辺) \end{align}$$ となり, 関数$y=3e^x-e^{2x}$が微分方程式の解であることが確かめられた.
この微分方程式についても解は複数ある. 例えば, 関数$y=e^x$もまた解であることが確かめられる.
定義 解が複数ある問題について, その一つの答えを特殊解といい, 全ての解を表したものを一般解という.
上の検算の例でも見たように, 「微分方程式を満たす関数を見つける」という問題も複数の解を持つ. このような問題では, $$特殊解よりも一般解の方が優れた解$$ と言える. また, 応用上も, 一般解を求めている方が扱いやすい. 講義では, 色々な微分方程式の一般解を求めることを学んでいく.
注意. 講義では取り扱わないが, 微分方程式によっては, 全ての解をひとまとめに表すことが難しい場合がある. そのような場合でも, 2,3の例外的な解を除いて全ての解を表すことができる場合がある. このようなとき, その例外を除いた全ての解を一般解といい, 例外的な解を特異解という.
簡単な微分方程式の一般解を積分を使って求めてみよう.
まず, 積分$\displaystyle\int f(x)dx$の意味を思い出しておくと, 微分の逆, つまり, $$\int f(x)dx=「微分がf(x)となる関数」(+ 任意定数C)$$ であった($C$は積分定数とも呼んだ). 故に, $$y^\prime=f(x)\quad\left(\dfrac{d}{dx}y=f(x)\right)\qquad\iff\qquad y=\int f(x)dx$$ である.
微分方程式 $$y^\prime=x^4-x^2+1$$ の一般解を求めなさい.
解. $$\begin{align} &y^\prime=x^4-x^2+1\\ \underset{積分}{\Longrightarrow}&y=\int(x^4-x^2+1)dx\\ \underset{積分を計算}{\Longrightarrow}&\ =\dfrac{1}{5}x^5-\dfrac{1}{3}x^3+x+C\quad(Cは任意定数)\\ \end{align}$$
以下の微分方程式の一般解を求めなさい.
(1) $y^\prime=\sin x+\cos 2x$
(2) $y^\prime=3e^x-e^{2x}$
解. (1) $$\begin{align} &y^\prime=\sin x+\cos 2x\\ \underset{積分}{\Longrightarrow}&y=\int(\sin x+\cos 2x)dx\\ \underset{積分を計算}{\Longrightarrow}&\ =-\cos x+\dfrac{1}{2}\sin 2x+C\quad(Cは任意定数)\\ \end{align}$$ (2) $$\begin{align} &y^\prime=3e^x-e^{2x}\\ \underset{積分}{\Longrightarrow}&y=\int(3e^x-e^{2x})dx\\ \underset{積分を計算}{\Longrightarrow}&\ =3e^x-\dfrac{1}{2}e^{2x}+C\quad(Cは任意定数)\\ \end{align}$$
1. 微分方程式を解くには, 微分だけでなく積分の知識も必要となる.
2. 微分方程式の解の検算は, 微分方程式に代入することで行える.
3. 一つの解を特殊解, (ほとんど)全ての解を一般解という.
次回は, 微分方程式の種類や解の用語法, 及び, 一般解から初期値問題(微分方程式+初期条件)を解くことを学ぶ.
教科書の練習問題1-11(p7-17), 総合練習1(p20)の範囲で,