日大工 総合教育 樋口幸治郎
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今回の主な内容は, 線形微分方程式の一般解の次元を学ぶことである(教科書p52-65).
$n$階線形微分方程式 $$非同次式\qquad y^{(n)}+f_1(x)y^{(n-1)}+\cdots+f_{n-1}(x)y^\prime+f_n(x)y=g(x)\tag{1}$$ $$同次式\qquad y^{(n)}+f_1(x)y^{(n-1)}+\cdots+f_{n-1}(x)y^\prime+f_n(x)y=0\tag{2}$$ について, $$非同次式(1)の一般解y\quad=\quad非同次式(1)の特殊解y_p\quad+\quad同次式(2)の一般解y_h$$ であった. 従って, まず同次式の一般解について知ることが重要である.
以下では, $$線形微分方程式の係数が定数$$ であるような線形微分方程式について学んでいく.
定義 係数が定数の線形微分方程式 $$y^{(n)}+a_1y^{(n-1)}+\cdots+a_{n-1}y^\prime+a_ny=g(x)\quad(a_1,\cdots,a_{n-1},a_nは定数)$$ を $$(n階)定係数線形微分方程式$$ という.
微分方程式のように, 複数の関数が答えと成り得るような状況を考えよう.
定義 問題$P$の一般解$y$が$n$個の特殊解を用いて, $$y=C_1f_1(x)+C_2f_2(x)+\cdots+C_nf_n(x)\quad(C_1,C_2,\cdots,C_nは任意定数)$$ と表され, $n$個より少ない個数の特殊解では, このような形で一般解$y$を表すことができないとき, $$f_1(x),f_2(x),\cdots,f_n(x)を基本解$$ といい, この個数$n$を解(空間)の次元という.
定理 同次型の$n$階定係数線形微分方程式の解空間の次元は$n$である.
従って, 同次型の$n$階定係数線形微分方程式 $$y^{(n)}+a_1y^{(n-1)}+\cdots+a_{n-1}y^\prime+a_ny=0\quad(a_1,\cdots,a_{n-1},a_nは定数)$$ の一般解$y_h$は $$y_h=C_1f_1(x)+C_2f_2(x)+\cdots+C_nf_n(x)\quad(C_1,C_2,\cdots,C_nは任意定数)$$ という形で表される($f_1(x),f_2(x),\cdots,f_n(x)$は基本解).
以下では, $n$個の特殊解$f_1(x),f_2(x),\cdots,f_n(x)$が基本解となる条件について学ぶ. それは線形独立性という条件で与えられる.
定義 関数$f_1(x),f_2(x),\cdots,f_n(x)$が線形独立であるとは, $$C_1f_1(x)+C_2f_2(x)+\cdots+C_nf_n(x)=0\quad\Longrightarrow\quad C_1,C_2,\cdots,C_n=0\qquad(C_1,C_2,\cdots,C_nは定数)$$ が成り立つことを言う. 線形独立でないときは線形従属であるという.
特に二つの関数$f_1(x),f_2(x)$が線形独立とは, $$C_1f_1(x)+C_2f_2(x)=0\quad\Longrightarrow\quad C_1,C_2=0\qquad(C_1,C_2は定数)$$ で, これは $$\dfrac{f_1(x)}{f_2(x)}\ \left(又は\dfrac{f_2(x)}{f_1(x)}\right)\ が定数ではない$$ と言い換えることもできる.
説明. $f_1(x),f_2(x)$が線形従属ならば, 少なくとも一方が$0$ではない定数$C_1,C_2$を用いて $$C_1f_1(x)+C_2f_2(x)=0$$ となる. 例えば$C_1\ne 0$ならば, 式変形することで, $$\dfrac{f_1(x)}{f_2(x)}=\dfrac{C_2}{C_1}=定数$$ と同じことであることが分かる.
2つの関数の線形独立性を示すことは難しくないが, さらに複数の関数の線形独立性を示す場合は, 以下の定理が役に立つ.
定理 解析的関数$f_1(x),f_2(x),\cdots,f_n(x)$が線形独立であることと, ロンスキー行列式$W(f_1,f_2,\cdots,f_n)$と呼ばれる行列式が$0$であること, つまり, $$W(f_1,f_2,\cdots,f_n)= \left| \begin{array}{cccc} f_1(x) & f_2(x) & \cdots & f_n(x)\\ f^\prime_1(x) & f^\prime_2(x) & \cdots & f^\prime_n(x)\\ \cdots & \cdots & \cdots & \cdots\\ f^{(n)}_1(x) & f^{(n)}_2(x) & \cdots & f^{(n)}_n(x)\\ \end{array}\right|=0$$ は同値である.
定理 解空間の次元が$n$の問題について, $n$個の特殊解$f_1(x),f_2(x),\cdots,f_n(x)$について, これらが基本解であることと, 線形独立であることとは同値である.
定理 同次型$2$階定係数線形微分方程式 $$y^{\prime\prime}+ay^{\prime}+by=0\quad(a,bは定数)$$ の特殊解$f_1(x),f_2(x)$について次の三つは同値である:
1. $y_h=C_1f_1(x)+C_2f_2(x)\quad(C_1,C_2は任意定数)$は一般解
2. $\dfrac{f_1(x)}{f_2(x)}$ (又は$\dfrac{f_2(x)}{f_1(x)}$) は定数ではない.
3. $W(f_1,f_2)= \left| \begin{array}{cc} f_1(x) & f_2(x) \\ f^\prime_1(x) & f^\prime_2(x) \\ \end{array}\right|=f_1(x)f^\prime_2(x)-f_2(x)f^\prime_1(x)=0$
微分方程式 $$y^{\prime\prime}-3y^\prime+2y=0$$ の一般解$y_h$は, 二つの関数 $$y_1=e^x\quad y_2=e^{2x}$$ を用いて, $$y_h=C_1e^x+C_2e^{2x}\quad(C_1,C_2は任意定数)$$ と表されることを示しなさい.
答. $y_1=e^x$と$y_2=e^{2x}$が微分方程式の特殊解であることを示し, さらに, 線形独立であることを示せば良い. 特殊解であることを示すために, $y_1,y_2$を微分方程式の左辺に代入して変形していくと, $$\begin{align} (左辺)=&y^{\prime\prime}_1-3y^{\prime}_1+2y_1\\ \underset{y_1=e^xを代入}{=}&(e^x)^{\prime\prime}-3(e^x)^{\prime}+2e^x\\ \underset{微分計算}{=}&e^x-3e^x+2e^x\\ \underset{計算}{=}&0=(右辺)\\ \end{align}$$ $$\begin{align} (左辺)=&y^{\prime\prime}_2-3y^{\prime}_2+2y_2\\ \underset{y_2=e^{2x}を代入}{=}&(e^{2x})^{\prime\prime}-3(e^{2x})^{\prime}+2e^x\\ \underset{微分計算}{=}&4e^x-6e^x+2e^x\\ \underset{計算}{=}&0=(右辺)\\ \end{align}$$ 以上で, $e^x,e^{2x}$が微分方程式の特殊解であることが分かった. 次に, これらが線形独立であることを示す. $$\dfrac{e^{2x}}{e^x}\underset{指数法則}{=}e^x$$ 右辺は定数ではないから, 線形独立である. よって, $e^x,e^{2x}$は基本解で, 一般解$y_h$は, $$y_h=C_1e^x+C_2e^{2x}\quad(C_1,C_2は任意定数)$$ と表される.
1. 同次型$n$階定係数線形微分方程式の一般解は$n$個の基本解(=線形独立な特殊解)を用いて表される.
2. 与えられた特殊解が基本解であることを確かめる方法を学んだ.
次回は同次型2階定係数線形微分方程式の基本解の求め方を学ぶ.
教科書p63の練習問題19を解きなさい.